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動物は視覚によるさまざまな手がかりから奥行きを知覚するが,相対的な位置情報を知るだけでなく絶対的な距離を測ることのできる機構として,つぎの3種類が知られている.
1つ目は,左右の眼の見え方の違い(両眼視差)を利用した両眼性の機構であり,ヒトを含む多くの動物がこの機構をもつ.
2つ目は,カメレオンなどの脊椎動物で知られているaccommodationとよばれる機構である.脊椎動物は一般にレンズの厚みを変えたり動かしたりしてピントを調節するが,対象にピントを合わせるためにどれだけレンズを調節したかという情報から奥行きの情報を得ることができる.
3つ目は,カマキリなどの昆虫で知られている運動視差とよばれる機構で,これらの昆虫は頭部を左右に振った際にどれだけ対象が速く(あるいは,大きく)動くかにより距離を判断している.この原理は,走行中の列車から外を眺めたとき近くのものほど速く通り過ぎていくことを思い浮かべるとわかりやすいだろう.
さらに,これらの機構のほかにも,ピンぼけした像のぼけの量(ある像がどれだけピンぼけであるかという情報)から絶対的な距離情報を得ることも原理的には可能であるが,このような機構をもつ動物はこれまで知られていなかった.
ヒトはピンぼけの情報を対象どうしの相対的な位置関係のおおざっぱな把握に使っているが,あるピンぼけ像からぼけの量を正確に知るためには別のピントの合った像あるいはピントの異なる像との比較が必要となるため,ヒトはぼけの情報から絶対的な距離を知ることはできない.
今回,筆者らは,ハエトリグモの一種Hasarius adansoniがピンぼけ像のぼけの量を用いて絶対的な奥行きを知覚することを示した.
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